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『こども食堂』に『母校への贈り物』、そして『ヒーローショー誘致』。まちの子ども達のために活動する株式会社開国の徳島代表。その思いとは?

『こども食堂』をご存じでしょうか?
ニュースやSNSで目にしたことがあるという方も多い気がしますが、あらためて調べてみると…

-「こども食堂」とは? -
   近年、地域住民等による民間発の取組として無料または安価で栄養のある食事や温かな団らんを提供するこども食堂等が広まっており、家庭における共食が難しいこどもたちに対し、共食の機会を提供する取組が増えています。

農林水産省HPより引用

とあります。
ここにあるように基本的には、『民間発』の取り組みということです。
つまりは、民間で無料または安価の食事を提供…となると赤字覚悟になるわけで、そうなると下田のような『小さなまち』の事業者では、経営的に余裕がなくなかなか難しいのかもしれません。
でも、ここ下田でも不定期ではありますが、『こども食堂』に取り組む事業者がいます。
市内に4店舗の飲食店を経営する株式会社開国厨房の代表徳島一信さんです。
徳島さんは、こども食堂の他にも、母校下田小学校の創立150周年を記念して在校生への贈答品や校舎修繕のための寄付金をつのる団体を立ち上げたり、仲間たちと共に『まどが浜海遊公園の遊具設置』の要望をまとめ上げて実現に導いたり、下田の子どもたちにもヒーローショーを見せてあげたい!と、ヒーローショーを開催させたり…とまさに下田の子ども達のヒーローのような動きを見せてくれています。
今回は、そんな徳島さんに、その原動力や思いなど伺ってきました。
是非、ご覧ください。

『こども食堂』たくさんの地域の子どもたちが楽しみにしています。
食事メニューだけでなく子ども達が大好きなお菓子やおもちゃも並んでいました。

この小さなまち下田は、主要産業の観光で繁忙期閑散期の差が激しい…という大きな課題を抱えていて、そんなまちで飲食店を4店舗の飲食店を経営していくのは、大変なご苦労があるのかと思います。
そんな中で、子ども達の為に様々な活動に取り組まれていて、徳島さんのいろいろな活動を聞きつける度に頭が下がる思いです。
今日は、そうした活動への思いを中心に伺えたらと思っています。
まずは、生まれてからの経歴、下田にお店をはじめるに至った経緯をお教えいただいてもよろしいでしょうか?

生まれ育ちは下田で、父親がまちなかで焼肉屋を営んでいました。
父親的には『高校行かずに店を手伝え』みたいな感じだったんですけど、それが嫌で、下田を離れたくて。
それなりに勉強してちゃんと高校に行って、都内に焼肉屋をチェーン展開してる会社がやってる専門学校を見つけて、ここなら親を説得できそうだ!と、進学しました。
卒業後は学校の系列の店で働いて、24歳の頃には2店舗を任される料理長になったのですが、さすがに…『帰ってこい!』という父親を断れなくなって、下田に戻ってきたのです。
でも、結局、父親と一緒には働けませんでした。
お互いに遠慮がないからかすぐに喧嘩になっちゃうんですよね。
ビールケースが飛び交うような昭和のドラマみたいな喧嘩をしょっちゅうしてました…笑。
こりゃダメだってことで、父親の店を出て下田市内の魚メインの居酒屋に就職しました。
ここなら魚の調理も覚えれるしいいなと。
そこで店長もやらせてもらって、下田での店の回し方を経験して、今度は、洋食も覚えたいと、伊東の洋食屋に就職して経験を積みました。
その後、その店で出会った人と一緒に店をやることになったんです。
伊豆高原で、お好み焼き居酒屋というスタイルの店でした。
でも、ふたりではじめたというのが良くなくて、お客さんそこそこ入ってたんですが、なかなかうまくいかなくて。
たまたま下田に帰ってきた時に、後輩の家の持ち物件が空いてるから、店やれば?という話になったのです。
でも、当時所持金30万しかなくて…無理かな?と思ったのですが、敷金礼金もなくてよい、内装も料理屋だったからほとんどそのままでいけそう…ってことで出店を決意しました。
調理器具や食器は、知り合いの不動産屋が廃業したホテルのを手配してくれたり。
トイレを和式から洋式に直しなってまちの人ご負担いただいたり。
こんなに?ってくらいご祝儀くれる方もいて。
そうして、たくさんのまちの人に頼って第一号店『なみなみ』を2009年にオープンすることができました。
2009年、オープン時の所持金は5万円!
なんとかなるもんですね…笑

酒好きにはたまらない雰囲気の『なみなみ』。カウンターの工事はDIYでされたそうです。
(写真提供:株式会社 開国)

ということは25万円で出店されたんですね。
それが出来たのは徳島さんの人柄があってのことでしょうけど、下田の人のつながりの強さも感じるエピソードかと。
これから下田で出店を考えているという人にとっても励みになる話です。
では、それからの歩みとメニューのこだわりなどもお聞かせください。

下田はキンメのまちって感じがしますけど、当時はまちの人はキンメを食べたことがないって人ばっかりで。
観光客が行くような店ってあまり行かないし。
でも、キンメのまちの人がキンメを食べたことないってのもなんだなって、まちの人に気軽に食べてもらいたいってキンメの串焼きってのを考えたら、これがすごく当たりました。

名物料理ともなっている『地金目鯛串焼き』。
素材のおいしさをダイレクトに感じることができます。

よし、じゃあ、もっと地元の人に地元のもんの良さをしってもらいたいっていろいろ地物をつかったメニューをつくったんですよね。
そんな感じで当初数年は地元民向けという感じでやってたんですけど、人口減少だとかもあって売上も落ちてきて…ちょうどその頃に、観光客にもキンメの串などが評判になってきて。
結果、地元の人も観光客にも来てもらえるようになって、ありがたいことに売上も安定してきて、店舗数が増えていきました。
2009年に一店舗目『なみなみ』、次の『ぼちぼち』が2010年。

2号店『ぼちぼち』は『路地裏レトロ酒場』。店内には懐かしい歌謡曲が流れています。

2011年に法人化して、2012年に『なかなか』、そして、2014年エステの店に挑戦して、失敗…即撤退…この業界は難しかったですね~。
で、2018年にダイニングバーなみなみを出店して、今のとこ落ち着いてます。(笑)

なるほど…すごい勢いで出店されたのですね。
でも、下田のような小さなまちで店舗を増やしていくって大変な苦労があると思うのですが、どんな思いからの出店なのでしょうか?

まずは、地元の雇用を促進したいという思いがありました。
僕が勤めてていたのは大きな企業もあったので、ちゃんとした社員教育を受けていたんですよね。
下田の飲食店では、そういうとこが少なくて。
なので、下田の飲食店でも『ちゃんと社会人としての教育を受けれ会社にしたい』という思いもあって、店舗を増やしていきました。
新店舗の準備、保健所の申請なんかも店長になる予定のスタッフにやってもらって将来、独立すぐできるようにしています。
そうして、立ち上げから関わると全然違いますよね。
店を大切にします。
あと、全店舗で30人いるバイトは特に、若い世代を積極的に雇って社会経験を積んでもらっています。

『雇用』と『社員教育』を下田でも!
本当にすばらしいです。
では、徳島さんの会社から独立された方もいらっしゃるのですか?

下田に2店舗、なぶらさんと後宴酒場さん、あと名古屋出身の元スタッフが下田直送の魚を売りにした店をやってくれています。
下田の2店舗も、名古屋の店もみんな順調のようで、嬉しいです。

それぞれの店では、海のものも山のものも豊かな下田・伊豆の食材を堪能できます。
食材は徳島さんが市場に直接買い付けに行かれることもあるそうです。

そうして、下田の食が全国に広がっていくって素晴らしいですね~
では、事業以外の取り組みについてです。
『こども食堂』など、子どもの為、まちの為に様々な活動をされています。
どんな思いで取り組まれているのでしょうか?

同じ歳、同じ業界の幼馴染がいて、彼に、
『自分たちが子どもの時には親の世代が子どもの為にいろいろ動いてくれていた。これからは自分たちがまちの為、子どもたちの為にやんなきゃいけないんだよ』
って言われて、確かにそうだな、と強く共感したんですよね。
そんなことがキッカケで活動するようになりました。

そうでしたか。
上の世代の思いが繋がったというのは、素晴らしいお話で、まちが良いカタチで引き継がれていくには大切なことですね。
では、具体的に取り組まれてきたことをご紹介ください!

不定期ですが、こども食堂を開催しています。
あと、今は母校の修繕やこども達への贈り物のために寄付を募っていて、その立ち上げ、窓口のひとりとしてやっています。
他に、『まどが浜海遊公園の遊具設置』に関わったり、イベントの時の『ヒーローショー』誘致にも協力しました。

まどが浜海遊公園の遊具は市民の要望が多く上がり、実現しました。
その要望をまとめ上げた中心人物に徳島さんがいらっしゃいます。
’22に開催された『ヒーローショー』誘致呼びかけのチラシ。
ヒーローショー誘致メンバー!まさに下田のヒーローですね。(右が徳島さん。)

あと、イベント時に出店した屋台の売り上げの一部を市に寄付しています。
こうしたことをやる度にいろいろと言われるのですが、モットーは『やらない善よりやる偽善!』と『財源も人口も少ない下田市、なんでもかんでも行政に頼るのでなくできることは皆で協力してやっていこう』です!笑

下田のイベントでお店少なかったら寂しいでしょ?
と、多くのイベントに出店されていて、その売り上げを寄付しているとは…驚きです。

『やらない善よりやる偽善!』!!!
徳島さんの活動を偽善とは感じませんが、確かに考えだけで実行しなければはじまりませんね。
その行動力、見習いたいです!
そして…財源も人口も少ない下田市、行政になんでもかんでも…という話。
行政で解決しなければなことがもちろんたくさんあるとは思いますが、市民の方がこうして積極的にまちの活性化に協力していただけるのは感謝しかありません。
本当にありがとうございます。

『こども食堂』にやってきたまちの子ども達を見てうれしそうな徳島さん。

とにかく『次の世代のために』を何度も口にされていたのが印象的なインタビューとなりました。
こうして、徳島さんを筆頭とする下田の『子育て世代』の思いを受けたこども達が大きくなって、また『次の世代のために』活動するのが、目に浮かぶようです。
まちをつくるのは、つないでいくのは『まちのひとの思い』なんだと、あらためて感じさせてくれました。

イベントの出店はご家族総出のことも。取材のご協力ありがとうございました!

株式会社開国 http://kaikoku-shimoda.sakura.ne.jp/index.html


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