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ファミリー層に特化した一棟貸しコテージをベースに、あらゆるツールで下田の魅力を発信する"PR隊長"


サニーサイドコテージ代表 濱口梨絵さん


吉佐美大浜のビーチサイドに45年続いたレジェンド・カフェがあったのをご存知でしょうか。
「サニーサイドカフェ」(1977年〜2022年)。開店当初、お店がなにもなかった吉佐美大浜で目の前の海を一望できるアメリカンスタイルのカフェはあっという間に人気を博し、深夜2時まで営業していた期間もあったそう。観光客にも地元の人たちにも愛され大切にされてきたサニーサイドでしたが、建物の老朽化に加えオーナーの斎藤さんご夫婦の年齢的なこともあり、2022年10月、多くの人に惜しまれながら閉店しました。
カフェの歴史にはピリオドが打たれましたが、サニーサイドの物語には続きがあります。娘の濱口梨絵さんが両親から受け継いだ2棟の山荘をリニューアルし、「サニーサイドコテージ」という貸別荘を始めたのです。小学生の息子さんを育てながらの宿泊業。Airbnbなど宿泊サイトへの登録、SNS運用、予約から接客、清掃、アメニティや備品の整備など宿泊にかかわる仕事をご両親とともに行う一方で、動画制作、写真、寿司職人、ヨガインストラクターと、多彩なスキルを身につけ、下田のさまざまなシーンで活躍しています。
本業のかたわら、アグレッシブに活動する濱口さんのベースには、「下田のいいところをもっと知ってもらいたい」という思いがあるといいます。

「気持ちのいいお天気なので、よかったら外でお話ししませんか?」
10月のよく晴れた朝、サニーサイドコテージを訪れると、少しずつ紅葉が始まっている森のなかのお庭に案内していただきました。風にそよぐ木立の音、野鳥の鳴き声しか聴こえない静かなガーデンテラス。なんとも贅沢な空間で、サニーサイドのブランドを受け継いだ濱口さんに、宿泊業のこと、これからの下田の観光のあり方などたっぷりうかがいました。

木々に囲まれたサニーサイドコテージの玄関にて

「私に宿をやらせてください」


———ここに座っていると、海が近いのを忘れてなんだか北欧の森の中に迷い込んだような気持ちになりますね。素敵な2棟のコテージはいつ頃に建てられたものなんですか?

ほんと、海より山を感じますよね。ここは26年前(1998年)に両親が建てたものです。いまでこそペンションや貸別荘がいくつかできていますが、当時は何もない森のなかでした。この敷地も山を開墾するところから行ったそうです。

きっかけは、カフェのお客さまのご意見からです。1977年の開店からたくさんのお客さまにご利用いただいていたのですが、外国の方も多く、この近くに宿泊したいけどいい宿がないとの声をよく聞いていたそうなんですね。そのことが父も母も気がかりだったみたいで、せっかく下田に来てくださったのに不便な思いをさせては申し訳ない。お客さまが快適に滞在できるコテージを建てて利用してもらおうと考えたそうです。もともと父はこだわりやなんですね。やるからには自分たちが住んでも心地よく過ごせる山荘にと、フィンランドのログハウスメーカー「Honka(ホンカ)」に頼んで、木材をフィンランドから取り寄せるなど、細部にこだわって建てました。

父の代は、「サニーサイドビーチハウス」という名前で、年間契約で貸してたんですね。おもに外国の方が利用してくださって、2年3年と契約してくれていました。休暇になると訪れ、自分の別荘のような感覚で使われていたみたいです。

1977年から15年ぐらいはそんな形でずっと借り手がいたのですが、そのうち使われなくなって、10年ぐらいかな。空き家の状態が続いていました。

——濱口さんはカフェの時代からご両親のお店に携わっていたんですか?

カフェの手伝いをするようになったのは、最後の数年だけです。私自身は、下田の高校を卒業後、埼玉の大学に通い、東京で就職。名古屋に転勤し、8年ほど下田を離れていたのですが、結婚を機に27歳のときに地元に戻りました。下田では介護の仕事を7年続けたのですが、からだを壊してもう無理だなと思って辞めました。その頃、両親も体力的にふたりだけでカフェの営業をするのがむずかしくなってきていたので、自分が手伝うことに。でも、子どもが生まれたばかりだったのでフルタイムでカフェの営業をこなすのは無理。どうしようかと思っていたところに、空き家になっていたコテージを自分がやるのはどうだろうと。

一棟貸しのまま、1泊から利用できるスタイルにして、鍵の受け渡しや施設の説明などきちんとできればあとはお客さまご自身でお好きなように過ごしていただければいいので、子育てをしながらでもできそうだなと思ったんです。それで両親に「私に宿の運営をやらせてください」とお願いしました。

父も母も喜んでくれました。ずっと使ってなかった建物ですし、二人ともカフェのほうで手一杯だったし、年齢的にももう一度宿泊業をやるというのは考えてなかったので。私が引き継いで活用してくれるのなら、建物も維持できるし、お客さまにも喜ばれるだろうからって。

「サニーサイドコテージ」と名を改め、再スタートしたのが2019年7月です。

両親からのバトンを受け継ぎ、新たに生まれ変わったサニーサイドコテージ

子連れで満足いく宿がない。ならば自分でつくろう!


――2019年というと前年の2018年に民泊新法が施行され、個人で宿泊業を始めるハードルがぐんと下がったタイミングですね。下田でも宿泊機能を備えた「コミュニティスペース羽衣」さんや、「まちなかゲストハウス伊勢町」さんがオープンしたのも2019年でした。その後、全国で一気に民泊事業者が増えたように、下田でも新規参入者が増えました。立地条件や設備の充実など、みなさんそれぞれに工夫されているようですが、サニーサイドコテージとしてどうほかと差別化を図ろうとしていますか?

私がいちばん大事にしているのは、お子さんのいるファミリー層に喜んでいただけるサービスの充実です。4、5歳ぐらいまでのお子さんが好きなおもちゃやプラレールなどを揃え、のびのび遊べるキッズスペースも用意しています。そのほか、お子様用の椅子、プラスチック食器類なども常備して、ご家族が快適に過ごせるコテージを目指しています。私自身が子育て中のママとして、家族で旅行に行ったときに不便な思いをしたり、キッズスペースがあっても本当に子どもが好きなおもちゃがなかったりした経験があるので、ここでは子どもも大人も満足いただきたいなと思っています。

室内には子どもが夢中になるグッズがいっぱい!


——子育て中のママさんならではのアイデアですね。ファミリー層に特化したサービスの充実。そこまできめ細やかにできているところは少ないと思うので、大きな強みになりますね。実際お客さまの反応はいかがですか?

嬉しいことにとても喜んでいただいています。キッズフレンドリーな宿として、リピーターが増えています。お部屋には何を書いてもいいノートを置いているのですが、こちらを拝見すると大人の方の感想に混じって、子どもたちのお絵かきや絵日記みたいなのも残っていて、みなさん思い思いに楽しいひとときをここで過ごされているのが伝わってきます。一棟貸しなので、ほかのお客さまを気にすることなく、ご家族でリラックスして過ごせるのも満足度につながっているようです。


地産地消BBQという新たなサービス


もうひとつ力を入れているのが、バーベキューと焚き火です。2棟のお庭それぞれにレンガ造りのBBQグリルを設置してあり、アウトドア用のBBQコンロも無料で貸し出ししています。室内には料理がひととおりできるキッチンと設備を完備しているのですが、キャンプブームもあってか宿泊されるほとんどの方がバーベキューを希望されますね。このあいだは関西方面からわざわざバーベキュー目的にいらっしゃったご家族もありました。

ライトアップされた夜の雰囲気も素敵

バーベキューは、屋外で火を囲みながらみんなでワイワイ食べたり飲んだり。ちょっとした非日常を味わえる贅沢時間ですよね。都会では気軽にできる場所も少ないでしょうから、自然が豊かな下田は、景色や空間も楽しめて、かっこうのバーベキュースポットといえるかもしれませんね。

自分たちで機材から食材から炭から準備すると大変ですが、サニーサイドコテージではお飲み物さえご持参いただいたら、食材や炭など必要なものをすべてこちらでご用意するプランがあるので、気軽にバーベキューを楽しめます。もちろん、ご自身でお好きな食材を持ち込んでいただいてもかまいません。

コテージの脇は川が流れ、緑に囲まれた最高のロケーションでBBQ


火を囲んで語らう時間は貴重な体験



——慣れている方は食材の調達もスムーズかもしれませんが、勝手がわからないと何をどこで買えばいいかわからなかったりしますものね。しかもサニーサイドでは地元の食材をふんだんに盛り込んだセットを提供されているんですよね。

そうなんです。開業した当初は食材提供のサービスはなかったのですが、金目鯛やサザエ、下田の「小木曽干物店」の干物など下田の海産物に加え、静岡県産の銘柄豚「ルイ・ヴィ豚」や、銘柄牛「伊豆牛」を扱う業者さんを紹介していただき、地元食材プランを提供できるようになりました。野菜も地元の農家さんの新鮮な野菜を中心に揃えています。どれも一般のスーパーなどではなかなか手に入らない希少な食材なので、せっかくだからと希望される方もいて、人気のプランになっています。

下田自慢の食材がずらり。人気の食材提供プランより


下田で貸別荘は多くあるのですが、BBQの食材を提供している施設はあまりありません。うちの個性のひとつとしてこれからも磨いていきたいですね。

なにより、地場産のものを積極的に使うことで地元の魅力を紹介することができますし、地産地消にもつながるかなと。

——お子さんのいる家族にフレンドリーな宿であること。地元食材を使ったバーベキューが楽しめること。どちらもありそうでなかったサニーサイドの強みですね。逆に、課題はありますか? 

やっぱり閑散期の誘客は大きな課題ですね。下田はどこもそうだと思うのですが、冬になるとめっきりお客さまが減ってしまうので、閑散期にも来ていただけるような対策が必要だと感じています。

夏の下田は極端に言ったら何もしなくても予約で埋まっていくのですが、人気のシーズンだから海も人がいっぱいで賑やかです。冬の閑散期は、観光客が少ないのでキレイな海も静かな森のなかも独り占め気分を味わえます。都会の喧噪に疲れた方や、誰にも邪魔されずどっぷり旅に没入したい方などは、寒くなり始める晩秋から河津桜で賑わい始める前の真冬がおすすめだと思います。そういうニーズの方々にどうやったら響くPRができるか、そこがむずかしいのですが、SNSを通じていろいろ発信していきたいと思っています。

目覚のコーヒーからはじまる爽やかな朝

あとは、地元のみなさんに楽しんでもらえるような企画をやっていきたいですね。焚き火ができるところは少ないので、焼き芋と焚き火の会とか、おいしいデリを提供してくださる地元のお店とコラボしてランチ会とか。

そうそう。今年の春にヨガインストラクターの資格を取得したんです。自然と一体となりながらヨガをする気持ちよさを伝えたくて、宿泊されるお客さまで希望があれば提供しています。まだ全然なんですが、こちらも力を入れていきたいですね。

SNSをフル活用し、「下田」をPR


——ヨガのインストラクターまで!すごいですね。何かきっかけがあったのですか? たしか、「
下田写真部」(地元の写真好きメンバーが、自分たちの心に響いたまちの風景をカメラで撮影し、SNSにアップする活動)のメンバーでもありましたよね。ほかにもいろいろ挑戦しているそうですが、そのあたりのことも聞かせていただけますか?

はい、いろいろやりたがりなんですよね私(笑)

ヨガは、サニーサイドカフェを手伝っていたときに、バイトで働いてくれていた女性がヨガのインストラクターで、その方に教わったのが最初のきっかけです。
自分は介護の仕事をしていた頃、原因不明の体の痛みに悩まされていました。それがヨガをするようになって体がずいぶん楽になって。ヨガとは何か、哲学的なお話しも聞かせてもらって、深く共感できたんですね。続けるうちに体だけじゃなくて、精神的な部分も安定させてくれるのを実感して、コテージにいらっしゃるお客さまにもこの心地よさを共有できたらと思い、自分も資格を取ろうと。

ヨガの心地よさをお客さまにも体験してもらいたいと自らインストラクターの資格を取得

今年は、地元の方向けに、ヨガ体験と、地産地消にこだわった外浦の惣菜店「デリカアン」さんのランチを楽しめるイベントを2回ほど行いました。とても好評でしたし私自身やってよかったと思い、これからも続けたい企画です。

「下田写真部」は、メンバーの方から誘っていただいたのがきっかけで入部(?)しました。正直、カメラのことは全然わからなかったけど、写真に興味があったのでやってみよう!と。私は2019年から続けているのですが、いまは12名の部員がいて、ほぼ毎日、順繰りに担当がまわってきてそれぞれがアップしています。最初の頃は風景の写真が多かったのですが、それだけだと尽きてきちゃって、あるときお店の紹介も含めた写真をアップしたらそれがフォロワーさんたちにもお店の方にも好評で。下田の情報として見ている方も多いのかもしれないと気づき、まちの話題やお店の写真を意識して紹介することが増えました。コテージのホームページやInstagramでもお店の紹介コーナーを設け、発信中です。

下田写真部のメンバーと。左端が濱口さん

それを参考にしてくれている人もいるみたいで嬉しいですし、自分もお店を知るきっかけになってよかったです。

じつは、下田の飲食店組合がつくっている「伊豆下田100景」という情報サイトの動画も担当しています。このサイトは「まだ知らない下田を探す」というコンセプトで、下田の魅力を深掘りするサイトなのですが、これまではコンテンツ中心で動画はなかったそうです。でもTikTokとかYouTubeとか動画の人気を受けて、新しくつくってみようとなって。動画編集はネットなどを見て学び、試行錯誤してつくっている感じです。でも、写真も動画も自分で発信するのが好きなんですね。楽しみながらやらせてもらっています。

——コテージのオーナーの枠を飛び越えて、多彩な活動をされてますね。「下田のPR隊長」と呼びたいくらい。

いえいえ、そんなたいしたことやってませんよ〜。でも下田をもっと知ってもらいたいという気持ちは強いですね。自分が子どもの頃から比べてお店が少なくなってきて、まちが寂しい感じじゃないですか。地元の人って、下田のこと、何もないって言うんですよ。私はそれが残念で。たくさん素敵なところあるはずなのに、見えていないのか感じられないのか……。何もないと思ったとしても、何もないよねで終わるんじゃなくて、自分たちが気づいていないかもしれないいいところをみんなで見つけていけたらいいなと思うんです。実際、私がお店の紹介をすると、ここ気になってたとか、入る勇気がなかったとか言われることもけっこうあって。自分の知り合いからすると、私が行ってるんだったらちょっと行ってみようかなと思うみたいで。みなさんのお店を知るきっかけになればいいなと思いながらSNS、頑張ってます。

下田のあちこちでお寿司も握ってます。


——やっぱり下田のPR隊長ですよ! 了仙寺の売店一角にできた立ち食い寿司「
寿しらぼ三〇二(みまつ)(※)」でお寿司も握っているそうですね。

寿しらぼ三〇三にて。板前姿も決まってます!

そうなんです。最初はクラウドファンディング用の写真のモデルを頼まれたんです。軽い気持ちで引き受けたのですが、そのときの写真を子どもに見せたら「かっこいいじゃんママ、やりなよ!」って応援してくれて、じゃあチャレンジしてみようか、という気になりました。先日も副市長さんの集まりがあって、握らせていただきました。
初めて握ったのは、7月にオープンした「風まち下田」(注・ゲストハウスやコワーキング機能などを備えた複合施設)のオープニングイベントのとき。ちゃんと数えてはいませんが、感覚的に100貫以上、握ったんじゃないかな。

風まち下田オープニングイベントの様子

まだまだ修業中ですが、やってよかった! お寿司を握る機会なんて、普通はそうそうない。それがプロの職人さんから直々指導を受けられて、自分が握ったお寿司をたくさんの方に食べていただけるんですから。ものすごく貴重な経験ですよね。

副業寿司職人の発案者で美松寿司4代目の植松隆二さんと

お客さまとの会話も楽しいのですが、副業寿司職人の仲間たちと出会えたことも大きかったですね。下田に住んでいる方だけでなく、東京とか拠点も仕事もいろいろで面白い。カメラマンだったり、デザイナーだったり、モデルの方もいたかな。クリエイティブな仕事をしている方が多くて、そういうのが面白い。私も、宿泊業をやってると話したらみんな興味を持ってくれて、本業を広める場にもなってます。

いつかもっと上手に握れるようになったら、コテージのお客さまに召し上がっていただきたいですね。隆二くんはケータリングもしているので、出張「寿しらぼ」をコテージで企画するのも面白そうです。

※「「寿しらぼ三〇二」とは…下田の老舗寿司店「美松寿司」の4代目、植松隆二さんが手がける新しい寿司のあり方を提案するプロジェクト。高齢化や人口減少で職人が減っている寿司業界で、新しい職人の育成プログラムとして、本業のかたわら寿司の技術を身につける「副業寿司職人」というスタイルを編み出した。2024年12月現在、下田市内外の15人の副業寿司職人が植松さんのもとで修業を積み、了仙寺の売店の一角にオープンした立ち食い寿司店の板場に立っている。


——夢が広がりますね! 動画撮影ができて、ヨガが教えられて、寿司も握れる。そんな宿泊施設オーナー、聞いたことないですよ。そのバイタリティの源はなんなのでしょう?

いろんなことに興味があって、気になったらやってみないと気が済まない性分なんです。でも、本業のコテージ経営も、ヨガインストラクターも、SNS活用も、動画も、寿司職人も、考えてみると、やっぱり下田をもっと知ってもらいたいという気持ちからなのかもしれません。

いろんな場所に顔を出していると、人とのつながりが広がって、思わぬことに発展するのも楽しいですし。

一昨年、下田市が主催する「次世代経営者育成プログラム」という勉強会に参加したのですが、ここでもつながりが広がりました。美松寿司の隆二くんと知り合ったのもここですし、運営者の梅田直樹さんがサポートしていたデジタルノマドの滞在先にうちのコテージを選んでもらったりもしました。10名の方が宿泊されて、半分は海外のお客さまだったので、インバウンド対策が弱いうちとしてはありがたかったです。ノマドワーカーの人たちはインフルエンサー的な存在の方もいて、彼らがSNSに情報をアップしてくれることで、新規ユーザーが広がる可能性もあるからです。

デジタルノマドのみなさんと交流する濱口さん。ここでの出会いがきっかけで新しい何かが生まれるかも

これまで自分の関心からいろいろなことに挑戦してきたのですが、それが意図せず本業にもつながっているから不思議。でもフットワーク軽く、声を掛けてもらったらとりあえあずなんでもやってみようというスタンスでいたのがよかったのかもしれません。これからも、地元のことで何か手が必要だというときに気軽に声をかけてもらえる存在でいたいですね。それが下田のPRにつながり、コテージを知ってもらえるきっかけになれば、これ以上嬉しいことはありません。

サニーサイドカフェでエプロン姿の濱口さんをお見かけしたのが最初の出会いでした。それから、ご両親の山荘を受け継ぎ、一棟貸しの宿泊施設のオーナーに。下田で「サニーサイド」といえば知らない人はいない伝説のカフェ。その大きな看板を背負い、最初はさぞかしプレッシャーだったのではないかと想像します。
コテージをオープンしてから5年。コロナ禍もあり、思うようにいかない時期もあったのではと思いますが、元来の好奇心と努力家である持ち味を発揮し、宿を飛び出し、広報という、まちづくりの重要な一端を担うようになります。頼まれごとは基本断らず、何でもチャレンジするアグレッシブな姿勢は、まちのみんなから頼りにされ、何かあれば、「りえちゃんにお願いしよう」と思われるほどの存在になっているようです。
子育てと家事。なにより2つの棟を構えるコテージの運営管理は大変なはずですが、ちゃんとそれぞれを両立させながら、下田の広報部長、PR隊長として楽しそうにまちじゅうを駆け巡っています。
そうするうちに彼女のまわりには、心強いサポーターが集まり、何かあったら手伝うよ、お客さんを紹介するよ、というような好循環が生まれている。それは、彼女自身がまちのために力を尽くしているからなのでしょう。

作為のない「利他」。
いま、下田のまちを見渡すと、利他精神で互いに助け合い、高め合う関係が育まれているような気がします。その最前線に立つひとりに、間違いなく濱口梨絵さんながいる——。今回の取材を通じて実感したことです。

アグレッシブに活動する濱口さん。これからも下田を面白くするアレコレ。期待してます!