「下田deワーケーション」が加速中!モニターツアーで見えてきた「理想のワーケーション」とは?
ツアーに参加したのは15名。おもに首都圏の30代〜60代と幅広い年代の方々で、会社経営者、個人事業主、公務員…とさまざまな立場の方が集まりました。
今回の企画のポイントは、「Work」の拠点にする場所選びから、観光や食事、移動についても、参加者がストレスなくアクセスできるようにすることで、"まちに馴染む"プロセスをスムーズにしようという点。
そのためのツールとして、伊豆急と東急、JR東日本が共同開発したデジタルサービス「伊豆navi」を参加者に活用していただきました。これはLINEで友だち追加すると、伊豆エリアの観光や飲食スポット検索、目的地までの経路検索や移動に便利な交通手段の案内、おトクなクーポンなどの情報が得られるというもの。
旅先など初めての場所では、どこにどんなスポットがあるか、自分好みの場所・お店の見当がつかず、いろいろ迷いますよね。「伊豆navi」を使えば、伊豆半島全域の季節の情報や、テーマ別エリア別に観光、飲食スポットを検索することができるので、たとえば「地元の人たちが集まる居酒屋で飲みたい」とか「地魚づくしの料理が食べたい」とか「スナック探索がしたい」といったリクエストにマッチする場所やお店に簡単にアクセスすることができます。
ツアーの参加者のみなさんには、この便利なアプリ「伊豆navi」を使って、下田は初めての訪問という方にも、それぞれのお気に入りのスポットを見つけていただき、2泊3日の期間で「まちになじんで」いただけたらと考えました。
1日目:Work! そして、地元の人たちとの懇親会
下田に到着した方から「WORK×ation Site 伊豆下田」にてオリエンテーションを行い、終わった方から順次、ワーケーションスタート。主な拠点である「WORK×ation Site 伊豆下田」は三菱地所が各地で展開するワーケーション施設で、仕事に必要な設備を完備するのはもちろん、目の前にエメラルドグリーンの海が広がるロケーションが最大の魅力です。
みなさん、まず海の美しさに感動。「こんなところで仕事できるなんて最高!」「遊びたい誘惑に負けちゃいそう、笑」など声が上がっていました。室内、屋上、テラス。それぞれ気に入った場所でパソコンを開くと、あっという間に集中モードに。さすが。ワーケーションを志向する方は、どこにいてもリモートワークができて、ON・OFFの切替が上手な印象がありますが、今回参加された方々もまさにそうでした。
初日の夜は、地元のプレイヤーとの交流を目的にした懇親会が開かれました。下田でビジネスを展開する事業者や、移住者、二拠点生活実践者なども交え、地元の老舗寿司店「美松寿司」の4代目、植松隆二さんによる出張寿司をいただきながら、みなさん大盛り上がり!下田で活躍する事業者と参加者の方が真剣に話し込んでいる場面もあり、地域の魅力や課題を共有する時間となったようです。
2日目:農業体験を通して地域の課題を知る
2日目は、「WORK×ation Site 伊豆下田」以外の場所で仕事をされている方もちらほら。下田市内には、ワーケーションに適した施設が点在しており、「伊豆navi」を使って検索することができます。
お昼からは、希望者で大賀茂地区で長く続く果樹園農家さんの畑を訪れ、みかんの袋掛け作業などを体験しました。
果実を獣害や寒さから守るための大事な作業。息が上がるほどの急斜面をのぼり、すべて手作業で行います。「こんな大変な作業をご家族だけでされていると知り驚きました。農家さんのご苦労があって、自分たちはおいしい柑橘をいただける。知ることができてよかったです」。参加した女性の感想です。農家さんからみかんのお土産もいただいて、貴重な地域体験でした。
ワーケーションをきっかけに「生き方」を見つめ直す
今回のモニターツアーは、実際にワーカーのみなさんに下田でワーケーションを体験いただき、生の声を吸い上げることが目的でした。ツアー後にお願いしたアンケートでは…
「最高のロケーションで仕事ができて捗った」
「下田が好きになった」
「いろいろなシチュエーションで仕事ができ、うらやましい環境」
「下田で生活している感じがして新鮮な気分で集中できた。人と出会えたことと自然のなかにいることでアイデアも浮かびやすくなった」
など、前向きな意見を多数いただいた一方で、ブラッシュアップを求められる声もあり、これからの課題が見えてきたように思います。
「地域との共創」をワーケーションの目的に掲げる下田市が目指すのは、ワーケーションを実践する人たちと、地元で頑張る人たちが交流することによって生まれるイノベーション。お互いの課題を知り、向き合うことで新しいアイデアが湧き上がる。あるいは都市で働く人たちが、自然豊かな下田で事業を展開する人たちの生き方、暮らし方、仕事観に触れることで、都市部とは違った価値観に気づき、自分の本当の望みにたどりつく。
突き詰めれば、大げさかもしれませんが、新しい働き方のひとつであるワーケーションは、人びとに「どこでどんな暮らしがしたいか」「自分にとって豊かな人生とは何か」という本質的な問いに立ち戻らせてくれるきっかけになりえると思うのです。
「働き方」は、イコール「生き方」。下田でのワーケーションが、それぞれの生き方を見つめ直すきっかけになればと願っています。
今回のツアーに参加したある女性は、2日間を振り返り「下田に移住するのもありかも」とおっしゃっていました。東京の会社に勤務されていますが、コロナ禍でリモートワークが進んだことで出社義務がなくなり、「住む場所は東京でなくてもいい」と考えるように。移住先を探しているなかの今回のツアーで、「釣りが好きだから下田は絶好の場所。ただちょっと遠いのが心配だったけど、こんなにきれいな海を毎日眺められるのなら、遠いのもがまんできるかな」と思われたそうです。
ワーケーションの定義はあいまいで、いまだに「休暇の合間に仕事をする」というイメージを持たれている方も多いかもしれません。でも、下田市が提案するワーケーションは違います。「働き方」「暮らし方」「生き方」を、個人が自律的に選べるようになるためのトライアル。それが下田市が考えるワーケーションの本来の意義です。
これからも、観光の延長ではない、真のきっかけづくりを提供していきたいと考えています。
そのために必要なのは、外から来る人と、地元の人との間で交流が生まれるようなしくみづくり。ワーケーション施設が整備されていることはもちろん大事ですが、それ以上に「人と人の交流」をデザインできるかどうかが、今後、ますます重要になってくるように思います。
ワーケーションは、コロナ禍の三密を避けるためのリモートワークから、新しい働き方のひとつ、地方と都市を結ぶ接点などさまざまなニーズに応えるべく、深化、拡張をつづけています。
ワーケーション事業に力を入れる自治体も全国に拡がるなか、下田市は何を強みとして個性を打ち出していくか。今後の展開が試されるとき。訪れる人にとっても、受け入れる地域にとっても実りをもたらすワーケーションのしくみを、私たちはこれからも模索していきます。